犬や猫に血液透析ができるの?

みなさんも人工透析って言葉は聞かれたことがあると思います。人では非常に一般的な治療なので、もしかしたら実際にご自身が透析をされている方もいらっしゃるかもしれません。
人工透析とは簡単にいうと低下した腎臓の機能を人工的に補うことです。
腎臓は再生能力のない臓器で、一度その機能が低下したら治療でその機能を取り戻すことは難しく(急性腎不全をのぞいて)、残った腎臓の機能で体が維持できなければ透析でその機能を補うしかありません。

人工透析には血液透析腹膜透析があります。血液透析は血液を一度体外に出し、その血液からダイアライザーと透析液を使って体内の老廃物を取り除き、体内に戻すというものです。それに比べて、腹膜透析はお腹の中に透析液を入れ、腹膜を介して血液中の老廃物を透析液のなかに引き込み、その透析液を体外に排出することで老廃物を除去する透析です。

腎臓には「尿素などの老廃物の除去」「電解質の調整」「水分調整」「造血ホルモンの分泌」「血圧調整」などたくさんの働きがあり、人を含めた動物はこの腎臓なしには生きていくことはできません。
この生きていくために必要な腎臓の機能を補うために透析はおこなわれます。

人では日本には約26万人の患者さんが透析をされているといわれており、非常に一般的な治療ですが、動物ではまだまだ透析が出来る病院は少ないのが現状です。

あそう動物病院では以前から腹膜透析を積極的におこなってきました。腹膜透析をおこなうことで、助かった命をたくさんみてきました。そのような経験があるため、当院のスタッフは透析の重要性やすばらしさを経験として知っています。
そして、腹膜透析よりもより効率よく透析の可能な動物用の最新の血液透析器をどうぶつ腎臓病センターに導入しています
どうぶつ腎臓病センターに導入された最新の透析装置は人に比べて小さな動物の透析を可能にするために、動物専用に設計された透析装置です。
腎臓病は日々の診療で非常に目にする機会の多い病気です。少しでもこの透析装置がみなさんのパートナーの助けになればと思います。
私たちどうぶつ腎臓病センターのスタッフも、透析をより効果的に行うために院内でディスカッションを行うだけでなく、より早期に腎臓病を診断して、透析などなしに長く健康でいられるようにアドバイスできるよう、獣医師・看護スタッフともに腎臓病のスペシャリストを目指しています。
透析の事だけでなく、腎臓病に関して、ご質問があるかたは病院スタッフまでお問い合わせ下さい。

動物への血液透析の紹介(ムービー)

どうぶつ腎臓病センターでは動物たちに対して血液透析を積極的におこなっています。紹介ムービーを作りましたので、ぜひご覧ください。 動物に対する血液透析は獣医師のなかにもまだ十分浸透していないため、透析中に麻酔が必要などと誤解を招く発言をされる先生がまだまだいらっしゃることが残念でなりません。もっと適した時期に紹介していただけたら、救命できたのではないかと思うことも少なくありません。なので、飼い主様だけでなく獣医師の先生にも透析について知って欲しくてこの紹介ムービーを作りました。


血液透析Q&A

血液透析の適応は?

急性腎不全や中毒(エチレングリコール中毒、レーズン中毒など)、慢性腎臓病の増悪期にはもっとも効果的です。とくに静脈点滴をおこなっても数値の改善しない場合、または尿量が少ない(乏尿・無尿)場合は解毒だけでなく、除水もできるので非常に効果的です。

動物の透析は麻酔が必要と聞いたんですが?

血液透析を行うためには、血液を体外に一時的に抜き、透析装置を通して、再度体内に戻す「ブラッドアクセス」というものが必要になります。この「ブラッドアクセス」のためのダブルルーメンカテーテルを入れる際に短時間の麻酔が必要になります。
カテーテルが留置されて、「ブラッドアクセス」が形成されてしまえば、その後の透析には麻酔は必要ありません。

透析で腎臓病はよくなりますか

「動物に血液透析ができるの?」にも書きましたが、機能の低下した腎臓を治療で治していくことはできません。透析はその機能の低下した腎臓を補うものです。
そのため、動物に対する血液透析は人の血液透析と違い、現在のところ限界もあります。
人の場合、腎臓の機能がほとんどなくても、血液透析だけで生きていくことが可能です。しかし、そのためには1週間に3日程度の透析が必要になります。動物もこの程度の頻度で透析ができれば、透析だけで生きていくことは可能かもしれません。実際に動物の透析の先進国であるアメリカでは透析だけで維持している子達もいるということです。
しかし、人と違って「ブラッドアクセス」に使える血管の問題や費用の問題などで、現在の所、腎臓の機能のほとんどがなくなった動物たちを透析だけで維持していくことは難しいと思います。

そのため、現在の動物に対する透析の適応は、急性腎不全(中毒や感染症、尿路閉塞など)で通常の治療に反応が悪い子で、でも短期間の間透析で腎臓の機能を補ってやれば、その後は透析から離脱できる子が、一番の適応になります。
また、慢性腎臓病(CKD)の子でも、一時的な増悪期であれば、透析をおこなうことで、状態を安定させ、その後透析から離脱して内科療法で維持できる場合もありますので、ご相談ください。


シェアする