尿検査
腎臓病や泌尿器疾患を疑った場合に尿検査は非常に大切な検査です。
ただ、なぜかこの尿検査をルーチンでおこなわない動物病院が多いのも確かです。おそらくその一番の原因は、人と違って尿の採取が大変というのが一番の理由だと考えています。
人の場合はカップを渡されて「おしっこ取ってきて下さい」ですみますもんね。自然排尿でも尿が汚染されることもほとんど無いでしょうし。
でも、動物の場合はそうはいきませんもんね。でもとても大切な検査で、キレイな尿を採取して検査をしなければ、汚染した尿で検査しても何の意味もありませんから。よく、ご自宅で尿を取られて、様々な容器に入れて持ってきて頂ける事がありますが、ありがたいのですが正直その持ってきて頂いた尿では検査の正確性は全くと言って良いほどありません。当院でも早朝尿の比重を見たいとき以外はご自宅で取ってきて頂くことはまずありません(ご自宅で持ってきて頂くときも滅菌された容器を病院でお渡ししています)。
ではどうやって採尿するかというと、当院ではほとんど全ての尿検査の尿を膀胱穿刺で採取します。
膀胱穿刺と聞くと怖いと思われる方もいらっしゃると思いますが、血液も針を刺して取りますよね?それといっしょで膀胱をエコーで見ながら細い針を刺して尿を採取します。動物が嫌がって暴れてしまうこともほとんどありませんし、毎日のようにしている検査でとても安全におこなえます。ある程度尿が溜まっていればいつでも採尿出来ますし、無菌的に採取している尿なので、細菌培養の検査もできます。当院の顧問をしていただいているアメリカの放射線専門医の宮林先生がよく言われていました「尿を膀胱穿刺で取れない病院が日本には多すぎる。ありえない。尿はたくさんの情報が含まれていてルーチンでおこなう検査なのに。アメリカなんて学生でも取るよ」と。本当にその通りです。
さて肝心の尿検査についてですが、一般的におこなうのはペーパーでのスクリーニング検査で潜血反応やpH、尿蛋白などを大まかに観察します。大まかにというのは尿ペーパーは正確性に欠けるので、ペーパーの検査で正常でも腎疾患がある子はUPCという尿中蛋白クレアチニン比は別の正確性の高い検査で調べますし、尿比重も動物用の比重計を使って調べます。潜血反応も沈渣を顕微鏡で観察して調べます。なのでペーパーの検査は一般的な検査でそれがすべて正しいとは考えていません(というか考えてはいけません)。
ペーパー以外では先ほど書いた尿沈査の検査や尿比重、尿中蛋白クレアチニン比、尿培養などを状況や必要に応じておこないます。
犬や猫の慢性腎臓病の分類にはIRISという団体が出している評価システムを使います。これは大きなグループ分けは血中のクレアチニン濃度を使用しますが、サブステージという細かい分類に尿中蛋白の有無と高血圧の有無が必要です。ですから慢性腎臓病の病期の診断や治療内容(尿中蛋白の有無や高血圧の有無で使用する薬物が変わります)には絶対に尿中蛋白の測定と血圧の測定が必要です。
とても大切な検査だと言うことが分かって頂けると思います。