今日は腎機能マーカーの事について書いてみたいと思います。
腎機能マーカーってなに?っと思われるかも知れませんね。腎機能マーカーとは腎臓の機能の低下を早期に発見するための検査です。
一般的に病院でよく検査される腎臓の検査はクレアチニンというものが多く、これはIRISという国際獣医腎臓病研究グループでも腎臓病のステージ分類に使われているもので、病院でも手軽に測定できて、非常に良い検査なのですが、欠点が二つあります。
一つは腎臓の機能が75%以上失われないと異常が出てこないということ。そしてもう一つは動物の筋肉の量によって数値にバラツキが出てしますことです(痩せて筋肉の少ない事は、腎臓の機能が低下していても筋肉量がある子に比べて低く出る傾向にあります)。なかでも腎臓の機能が75%以上失われないと異常を発見できないというのは致命的な欠点です。
そのため、昔からもっと早く腎臓病を測定するために、さまざまな検査がおこなわれてきました。もっとも確実なのはクリアランス検査といわれるもので、動物ではイオヘキソールクリアランス検査やイヌリンクリアランス検査などが行われてきました。しかし、薬を投与しなければいけないということや、複数回の採血がいるということから、モニタリングとして頻繁におこなうのはなかなか面倒な検査です。
そして少し前に人でも利用されているシスタチンCという腎機能マーカーが動物でも使えると言うことがわかり、現在も検査センターで検査が可能です。このシスタチンCはクレアチニンよりも早期に腎機能の低下を見つけることができるということと、薬物などを使わなくても検査できるということで、かなり注目されました。しかしなかなかうまく行かないもので、人ではシスタチンCは筋肉や体格の影響を受けないと言われていますが、なぜか犬では大型犬に関しては数値にバラツキが出るということで、現在は15kg以下の犬には推奨されていますが、それ以上の体格の犬には推奨されていません。また、猫に関してはこのシスタチンCはクレアチニン以上の感度がないということで、これまた推奨されていません。しかし15kg以下の犬に関してはとても利用価値のある検査です。当センターでは、春くらいから人の院内のシスタチンCの測定機器で動物のシスタチンCが測定できないか調べてきましたが、15kg以下の犬に関しては検査センターの数値と非常に相関の高い数値が出ることがわかりましたので、中型犬以下の体重の犬に関しては、将来的に院内でシスタチンCを測定できるようになりそうです。
でも、大型犬を飼ってる飼い主さんや、猫の飼い主さんはどうすればいいの?と思われますよね。
実はもうすぐSDMAという素晴らしいバイオマーカーが日本でも利用できるようになります。このSDMAは腎臓の機能が40%以上失われた段階で異常が出てきますので、今までの腎機能マーカーや尿検査よりも早期に慢性腎臓病を発見できる検査です。IDEXXという検査センターで測定できるようになるのですが、このSDMAは慢性腎臓病の猫ではクレアチニンに比べて17ヶ月、犬では9.5ヶ月早期に慢性腎臓病を検出できると報告されています。
かなり信頼性の高い検査と言うことで、先程も書いたIRISという団体の慢性腎臓病のガイドラインにも取り入れられました。これは画期的なことです。おそらく2016年の早い時期にこの検査ができるようになると思います。健康診断の血液検査の時などにいっしょに測定していただくといいのではないでしょうか。

写真の猫はうちのちゃー君ですが、糖尿病なのでSDMAが測定できるようになったら、すぐにでも測定しようと思っています。


シェアする